歩いているとたまに、
更地になった土地に
水道の蛇口が一つ残っているのを
見かけることがある。
あれは、いわゆる水道ではなくて、
地下から水を引っ張っている井戸だ。
井戸を下手にふさぐと
よくないことが起こる。
なぜなら、水は命そのもので、
命を地下からお借りして、
この土地は栄えてきたのだ。
丁寧に埋めないと、
必ず罰が当たるのだ。
そういう話は
熟練の年かさの職人しか
知らないだろうが。
昔は井戸は掘るときよりも、
しまうときの方が命がけだった。
その場所に流れる、
命の流れを邪魔せぬように、
きちんと井戸を閉じるには、
技術だけではない力も必要だった。
大体、職人だけでは閉じられず、
神主か、僧侶が同席して、
うまく命の流れを汲んで、
井戸を閉じたものだ。
私たちの地域では、
井戸を閉じるとき、
長い筒を地面にさして、
ごくろうさま、かみさま、
閉じないで、開けないで、
お流れください
と言って、
茶碗に入れた生米を流す。
他の地域では
また違うやり方があると聞く。
私は、
こういう話を集めている。